1999年のワーキングホリデー・ビザが下り、また、幸運にも今まで働いていた会社(鉄工関係で経理課勤務)で1年間の休職を認められたので、どうせやるならこれまでやってきた仕事と全く関係のないことをしたいと思っていました。以前からワインが大好きだったので、ナイアガラ周辺がワインの産地だということを知ったとき「ワーホリでワインのことも勉強できたら一挙両得。これしかない!」と思ったのがきっかけでした。

 トロントで1月から3ヶ月間語学学校に通っていたのですが、土、日曜日を利用して3月中頃からナイアガラ付近のワイナリーに履歴書を配り始め、その中で興味を持ってくれたところが一件あり、5月からそのワイナリーで働くことになりました。今はナイアガラ・オン・ザ・レイクに住んで居るのですが、聞くところによるとここで部屋探しをするのは難しいとのこと。地元の新聞社に電話したところ、偶然、希望に会う物件を教えてくれてこれもあっさり決まりました。仕事探しは運だ、とよく聞きますが、私の場合は仕事探し、部屋探しとも本当にラッキーだったと思います。

 カナダのワイナリーで働いて勉強になるなと思ったことは、いろんな種類のワインを作っているのでそれらの違いを確認できると言うことだと思います。というのは、古くから有名なワインの産地では決まったぶどう品種でしかワインを作っていない。たとえば、ブルゴーニュの赤ワインはピノ・ノアールという1種類のぶどうしか使わない、といったようにその地域特産のぶどうに固執しているのですが、カナダを始め、ニューワールドと呼ばれるワインの産地ではそういうことにとらわれずいろんな品種からワインを作っています。たまにそれぞれのワインの特徴がこんがらがったり、その上、英語で説明すると言うことに苦労しているのですが毎日テイスティング・ノートを眺めて勉強しているところです。

 ワイナリーではお客さんの試飲を手伝ったり、ワインの説明をしたり、売ったりという販売の仕事をしていますが、上述の通り英語が得意でない私には本当に大変です。たまに「英語の話せる人に変わって」とか言われると、自分の実力以上の仕事に就いてしまったかな、と悩んでしまうときもあります。しかしそんな時や、接客に困っているときは職場の仲間がよくヘルプしてくれます。一番ありがたいと思うことが英語がよく理解できない私にみんなが分かるまで説明してくれるし、聞き間違えたり、違うことをしてもいやな顔をしたり笑ったりしない。もし逆の立場だったら自分はそこまでできるか自信がない。ワイナリーの人たちの心の広さがとてもありがたく感じます。また、私のつたない説明でも聞いてくれて、帰り際に「I appreciate your help.」とお客さんが言ってくれると、やっぱりこの仕事に就けてほんとによかったなと思うし、いやなことも吹っ飛んでしまいます。それと先日、ナイアガラ周辺のワイナリーを視察に来られていたソムリエの田崎真也氏がうちのワイナリーにもお見えになり、会うことができました。緊張してほとんど何も話できなかったけど、これだけでもワイナリーで働いた甲斐があったというものです。

 カナダに来て6ヶ月、今一番「カナダにいるな」と実感しています。ここは田舎なので、部屋のオーナーを始め周りのみんながとっても親切でフレンドリーだからだと思います。これまで思い通りに行かないことも多かったし、これからも順風満帆には行かないと思います。これから先のこともあまり考えていません。だだ、後から振り返って、「ワーホリやってよかった。カナダを選んで正解だった」と思えるように、そこそこがんばっていこうと思います。

June 25, 2000

写真=田崎氏が本人が働くワイナリーへ視察に来られた時のもの。写真右が今年の9月から10月にかけてカナダで行われるSommelier du Mondeに出場予定のニューオータニ東京のレストラン「トゥールダルジャン」のソムリエで現在日本一のソムリエともいえる石田博氏、写真右から2番目が本人、写真右から3番目が田崎真也氏。



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